芥川龍之介 ~人間の本質~
私は芥川龍之介の作品が好きです。
なぜなら、芥川の作品は
人間の本当の内面や感情を綺麗なところから醜いところまで実に忠実に表現しているからです。
社会で生きていく中では、当然100%本音だけで他人と関わっていくことは不可能です。だから私たちは本音と建て前を使い分けます。時には自分の感情に蓋をする。時には感情や思いを本音と全く違った方向に無意識に操作しているのかもしれません。
芥川はそんな社会に生きる人間の外側からは見えない内側の美しさや醜さにスポットをあてているのです。
これが私の思う芥川文学の魅力です。もちろん表現やストーリーも大変すばらしく、心にじんわりと残る話が多数あります。児童文学として読まれている読みやすい作品もあるので、ぜひ一度読んでみてください。
今回は私がおすすめする芥川文学をいくつか紹介します。
(どんな話かを少しだけ紹介します。多少ネタバレになるかもしれないので、気になる人はここから先は読まないほうがいいかもしれません)
- 1.初めての芥川文学 「魔術」 「トロッコ」 「蜘蛛の糸」
- 2.本当の強さ、大切なものとは・・・ 「杜子春」
- 3.臆病とは、勇気とは・・ 「白」
- 4.傍観者の利己主義 「鼻」
- 5.意志の脆さ、人間の弱さ 「羅生門」
- 6.狂気と芸術 「地獄変」
- 7.愛と憎しみ 「偸盗」
- まとめ
1.初めての芥川文学 「魔術」 「トロッコ」 「蜘蛛の糸」
初めて芥川文学を読む人におすすめなのは、この三作品です。なぜかというとこの三つはほのぼのしているからです。
芥川の作品はわりとドロドロとした印象だったり、不気味な感じを受けたりするものが多いけどこの三つは比較的ほのぼのと軽い空気が漂う話です。
「魔術」
欲がある人には使えない魔術を習うため、あらゆる欲を我慢するが・・・
「トロッコ」
子どものどこまでもいけそうな冒険心と、それと裏腹に急に臆病になる心描かれている。
「蜘蛛の糸」
大泥棒のカンダタは小さなくもを助けたことを認められ、お釈迦様に地獄から救ってもらえそうになるが、最後は自分だけが助かろうとして・・・ 自己中心的な考えの末に・・・
2.本当の強さ、大切なものとは・・・ 「杜子春」
杜子春という若者は仙人に助けられ、2度大金持ちになるが寄ってくる人たちは皆お金目当て。むなしい人付き合いに嫌気がさし、仙人になろうとするが、最後は大切なことに気づく・・・
3.臆病とは、勇気とは・・ 「白」
他者のピンチに臆病な心が勝ってしまい助けにいけなかったシロ。次の日、真っ黒な姿になってしまう。主人からも「なんだこの黒い犬は」と追い出され、途方に暮れるシロ。自分の臆病さを反省したシロが勇敢な犬となろうと決心し、数々の人助けを行う。
4.傍観者の利己主義 「鼻」
鼻がとても長く大きい内供、その鼻を見たみんなから笑われていた。内供は鼻を小さくしよう試みる。鼻を湯がいて弟子に踏み踏みさせると、次の日には鼻が小さくなっていた。「これで周りの者に笑われずに済む。」しかし、内供を待っていたのは、鼻が長かったころとはまた違う冷ややかな笑いであった。
〝人間の心には互いに矛盾した二種類の感情がある。〟〝消極的な敵意〟〝傍観者の利己主義〟
5.意志の脆さ、人間の弱さ 「羅生門」
下人は正義感で死人の髪を抜く、老婆を止めようとする。しかし、老婆の言い分を聞いて、「生きるためにする悪はやむを得ない」これも一つの正しさだと考えを変える。下人の行方はだれも知らない。
6.狂気と芸術 「地獄変」
天才的な絵師の良秀は殿様に「地獄を描いてほしい」と頼まれ、「見たものしか描けませぬ。」と返事をする。殿様は良秀に地獄を描かせるため、良秀の娘を車に乗せ、火にかける。それを見た良秀は、呆然と立ち尽くした後、悦びの表情を浮かべて狂気の沙汰で地獄を描く。芸術を極めた人間の狂気がそこにはあった。
7.愛と憎しみ 「偸盗」
盗賊団の頭で大変な美貌と残虐で冷酷な心を併せ持つ沙金と盗賊団に加担する太郎と次郎の兄弟が主な登場人物。太郎は沙金に惚れていたが、次郎も沙金と近づいており、太郎は激しく嫉妬し次郎を憎むようになる・・・
愛、妬み、利己主義・・・人間のあらゆる醜さがつまったドロドロの作品。
まとめ
1~7にいくに従って、ドロドロとした作品となっています。芥川初心者は1から読んでみるのがおすすめです。おもしろいと思ったら徐々に芥川の不気味でディープな世界も楽しんでみるといいと思います。